「食事で母乳は変わるか」は科学的なトピックだ。
●森戸やすみ先生の母乳についての記事に異論あり!をよむ
「科学的にみれば、食事で母乳は変わらない」という説が、最近注目されている。
「食事で母乳が変わるなんて非科学的な話だ」なんていう記事をのせるサイトもあったりする。
そういう記事を読んでると、
「そーか、食事で母乳が変わるなんて科学的にありえない話だったのか~」と思っちゃいそうになる。
でも「食事で母乳は変わるか」という問い自体は、じつは十分、科学的だ。
えっそうなの? と思ったアナタ、ぜひ読んでいってくださいませ。
■「根拠がない」ってどういうこと?
そもそも、ある話の内容が「根拠がない」とされるとき、その事情は大きく分けて三つある。
(ほんとはもっと細かいらしいけど、ここではざっくりにしとく)
2 科学的な適切な研究がされたうえで、「まちがっている」と結論付けられた。
3 科学的に適切な研究がまだされていないので、研究結果がない。
1 科学的に適切な研究をするすべがないか、あっても現実的に難しい。
たとえばどんな話かっていうと、「母乳育児には愛情があふれている」みたいなやつ。
「愛」ってなんなのか? 「愛が溢れる」ってなんなのか? からはじめなくちゃいけなくなって、そんなこと人によって違うから、研究の対象にするのは難しい。
「いい母乳を飲むと乳児の瞳が輝き、うれしそうにする」とかもそう。
「いい母乳」「瞳が輝く」「うれしそう」・・・ぜんぶ主観的な意見なので、一般化、数値化できない。
こういうのは、俗にいう「非科学的」ってやつだ。
「信念」「思い込み」とか「言い伝え」とか呼ばれることもあるかもしれない。
なんにしろ、やっきになってホントかどうかを確かめる、べきものではないように思う。
「ふーん、そうなんですか、まあそういうこともあるかもね。ないかもだけど」ぐらいでいいと思う。
2 科学的な適切な研究がされたうえで、「まちがっている」と結論付けられた。
母乳神話のなかで、はっきりこれだといえるものは思いつかないけど、もしあれば、それは「デマ」「迷信」と呼んでいい。
このサイトで扱っているものでは、たとえば「玄米は日本人の伝統食だ」がある。これにはきっちりした手順で検証した結果、事実でないことが分かった。
●『「玄米は伝統食」のウソを暴くマンガ。』
こういう「デマ」は、場合によっては有害なことがあるので、そういうときは訂正されなくちゃいけない。
3 科学的に適切な研究がまだされていないので、研究結果がない。
いわゆる「未検証」。
まだちゃんと調べられていないので、真偽がわからない、ということだ。
■「食事で母乳が変わるか」は科学的なトピックだ。
「母乳神話系のサイトの情報は、根拠のないものが多いから惑わされないようにしよう」という、最近よく目にする呼びかけ。
それ自体は、私もその通りだと思う。
なので、そういうサイトを見るなら、書いてあることをうのみにせず、自分で調べなおしたり、考えたりしなくちゃいけない。
とはいえ、育児中はナーバスになってしまうから、そうもいかず、苦しんでしまうママさんもいるだろうなと考える。
だから基本的には、「母乳神話系のサイトの情報は、根拠のないものが多いから惑わされないようにしよう」には賛成だ。
・・・なんだけど、最近ちょっと別の心配を感じるようになった。
それは「根拠のない情報が多いから惑わされないようにしよう」という呼びかけが、ネットで拡散していくうちに、
「母乳神話系サイトの情報はすべて非科学的だから信じるな」になっていっている気がするからだ。
さっきも「食事で母乳の味が変わるなんて、非科学的なことを信じるのはやめよう」みたいな記事を目にして、「この人の姿勢はあんまり科学的ではないようだけど、大丈夫かな」と思ったりした。
実際のところは、母乳神話系サイトの情報には、1、2、3すべての情報が混じってて、
その中で「食事で母乳が変わるか」は、十分科学的なトピックだ。
被験者は母で大人だから、食事管理できるし。
ある飲料の成分を、色々な角度から分析し、数値化することはできるし、されているし。
実際に、粉ミルク会社の研究室では、母乳に準じる品質の粉ミルクを作るために、そういったデータが駆使されているわけで。
だから問題は、「食事で母乳が変わるか」が2か3のどちらに属するか、
つまり、十分に研究されたかどうかってことだ。
■母乳の研究論文はすくない。
とはいえ、「食事で母乳は変わらない」説にはもちろん論拠があるはずだ。
一方で「母乳が乳児アトピーの原因になっている場合が多い」という説を支持している立場としては、反証も探してみたくなる。
(ほんとは、母乳神話系サイトの人たちがそういうことを始めるかなあと思っていたんだけど、どうやらその気はないみたい。)
永田良隆先生が臨床データから導き出した「母乳育児における、和食の大切さ」。
それが、このまま「いい母乳を飲むと乳児の目がきらきら輝く」とか「悪い母乳を飲むと乳児の髪が逆立つ」とかの非科学的な情報と一緒くたに否定されてしまう流れには、ちょっと抗っておきたい、という気持ちがある。
なのでちょっと調べてみると、母乳に関する研究論文というのは、ものすごく少ないんだなということが、とりあえずはわかった。
たとえばアトピーに関する論文なんかとは比べ物にならない少なさ。
研究し尽くされたフィールドではない、という感じがする。
うーん、今までにどんな研究がされたのか、すごく興味がわいてきた!
調べたい・・・(笑)
興味がある方(いたらうれしい)、そのうちレポートするかもしれないので、気長に待っててね。
●カレーは母乳に出るか、の論文読んだよ!