これぞ食育!(ソーセージ、続き)
1 ソーセージはなぜ豚肉だけなの?
2 これぞ食育!(ソーセージ続き)
3 肉は体に悪い?・・・の前に。
4 ドイツのうたげ!
さて、前回は、どうしてソーセージは豚しかないのか、を簡単にまとめたわけですが。
■食べ方には、意味がある
実は、豚が冬の前につぶされ、肉にされたのには、まだいくつか理由があります。
●豚は、人間と食性がかぶる
豚は、人間と同じ雑食で、穀物を主食としています。
だから、もっとも食料がなくなる冬には、人間の食料をおびやかす家畜となってしまうのです。
鶏もそうですが、卵という見返りがあります。
ちなみに牛や羊やヤギは草食。
北ヨーロッパには、人間の役に立たない牧草地はたくさんありました。
●豚のえさは、秋に豊富
秋になると、ドイツの森では、どんぐりが育ちました。
なので、秋に豚を森に放せば、冬の前までには美味しく太らせることができたわけです。
ちなみに、ドイツ人はどんぐり食べないみたいです。
(日本の縄文人は食べてましたけどね)
●豚乳の効率の悪さ
世界には、いろんな動物の乳を飲む文化があります。
牛、ヤギ、ヒツジ、馬・・・、遊牧民ベドウィンはラクダの乳も飲みます。
(ちなみに、ラクダの乳は成分が人間の母乳に似ていることから、ベドウィンの文化では最も上等な乳とされています)
でも、豚の乳を飲んでいる文化は聞いたことがありません。
それはなぜかというと、豚は子供をたくさん産むんですね。
ですから、ひとつの乳房から一度に搾乳できる乳の量が非常に少ないのです。
絞って絞れないこともないんでしょうが、効率が悪いことはすたれるのが文化なんでしょうね。
しかも、たくさん産む上に、あっという間に成長する!
これは食肉にされちゃいますね。
そんなこんなで、豚は秋に太らせ、冬前につぶし、保存食として加工する、という文化が確立したのでした。
中でもソーセージは、あまりものの詰め物として生まれたわけです。
日本ではなんだか高級なもののように感じられるソーセージ。
起源としては、冬を生き延びるための、ぎりぎりのたべものだったんですね。
こういった食文化史を調べていると時間を忘れてしまいます。
いろんな食べ物、いろんな食べ方。
その一つ一つに、それが選ばれた歴史と、意味がある!
その物語は、ときに、小説よりもずっとおもしろい。
そして、最新の科学的なデータと同じくらい大切なことを、私たちに教えてくれると思っています。
■これぞ食育!
さて、「ソーセージは、もともとはあまりものでできていた」と知った息子。
しかし、なかなか信じてくれない。
そりゃそーよね。今のソーセージはおいしいもん。
これ、1985年のNHK特番を収録した全八巻のシリーズですが、どれもすばらしい。
食とは何か? を教えてくれるシリーズ。
食文化というフィールドを見つめるにおいて外せないDVDだと思います!
こちらの一巻には、ドイツの、冬を迎えようとするある一家の、豚の屠殺、解体、加工の映像が収められています。
庭先で、一家総出、半日がかりで、一匹の豚を「食料」に加工する。
その手際の見事さと、目玉と蹄以外は食べるというもったいない精神には、衝撃を受けます!
息子と娘は、食い入るように見つめ、「すごいねえすごいねえ」と繰り返してました。
その後、なんども見ていました。
気に入ってくれて、母としてはとてもうれしいです。
NHKの特番DVDはけっこう公立図書館に揃ってるので、みなさんもよかったら探してみてくださいね!
でも、わが子たちよ、
児童館で「豚の腑分け」「血のソーセージ作り」ごっこはやめてくれ・・・(゜o゜)!
●おもな参考文献