植物油はナチュラルだ、という幻想。その③
こんにちは。
子供たちのアレルギーが食事で治りました!
いまも三人育児に奮闘中の佐々木愛です。
1 自然派スイーツでアトピーに?
2 植物油はナチュラルだ、という幻想。その①
3 植物油はナチュラルだ、という幻想。その②
4 植物油はナチュラルだ、という幻想。その③
5 ナチュラルなものは身体にやさしい、の落とし穴(終)
この記事は、「植物油はナチュラルで体にやさしい」という漠然としたイメージを、以下の三つに分け、その実態を語ってみようというものです。
(誤解を恐れず言えば、私はこれらすべてのメッセージが、アレルギー予防や改善の観点からは、間違いであり、有害であると考えています)
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2 植物油はナチュラルだ
3 ナチュラルなものは身体にやさしい
今回は、前回「植物油はナチュラルだ、という幻想。その②」の続きを書きます。
■マクガバンレポート、その後
さて、マクガバン・レポートにより、1970年代から、
脂肪総摂取量を抑えたうえで、動物性油脂に代わり、精製された植物油(マーガリンやショートニング)を摂りいれるようにと勧められたアメリカ。
しかし、1990年代になると、今度はトランス脂肪酸の問題が浮上。
精製された植物油脂に多く含まれるトランス脂肪酸の摂り過ぎは、心疾患などのリスクを上げるという研究結果が!
その後トランス脂肪酸は、含有量の記載が義務付けられたり、使用量が規制されたりしました。
また、同時期に、動物性油脂より植物性油脂の方が体にいいというリノール酸神話も崩れ去ります。
植物油の主成分であるリノール酸の摂り過ぎが、心疾患やアレルギー疾患などを引き起こすことが明らかになったのです。
そして、このような流れの一方で、バターなどの動物性油脂は本当に悪玉なのか? という論争も白熱して続いています。
欧米における「油」とは、歴史的に言えばやっぱり動物性油脂なわけで、バター信仰は根強いんでしょうね。
また、肥満解消のためには、脂肪の総摂取量を抑えるよりも、糖質制限の取り組みの方が主流になってきつつあります。
そんなこんなで今、アメリカでは「動物性油脂より植物性油脂が体にいい」と思われているわけではありません。
それを象徴するような『タイム』2014年7月23日表紙。
(「バターを食べよう」
「Scientist labeled fat enemy.Why they were wrong?・・・科学者はバターを敵とみなした。なぜ彼らは間違ったんだ?」
この話題について、タイム誌の表紙を並べて見ていくととても面白い(^^))
一方の日本では、今ではすっかり、食用油=植物油です。
そして、精製された植物油脂について明らかにされた問題は、控えめにしか取り上げられませんでした。
トランス脂肪酸については、アメリカ人に比べ、日本人は摂取量が少なく問題ないとして規制はされていません。
2011年に消費者庁が食品企業などに含有量表示を勧める指針を出していますが、強制力はありません。
リノール酸については、日本脂質栄養学会が、2002年に「リノール酸は過剰摂取気味だから控えるように」という旨の提言を出しています。
しかし、厚生労働省「日本人食事摂取基準」に、あんまりその提言は反映されていません。
つまり、わたしたち普通の消費者が、テレビやスーパーなどで目にできる形で、これらの問題が取りざたされたことはなかったし、たぶんこれからもないと思われます。
さて、さらにその後・・・現在の話ですが、
アメリカにおいては、食生活全般の見直しが行われ、油脂の摂取量を減らすだけでなく、ジャンクフードを避け、繊維質を多くとるなどの総合的な食改善が、政府主導で推進されました。
その結果、アメリカにおける、現代病の代表であるがんは減少に転じたのです。
しかし日本においては、そもそもそんなに使っていなかった油脂を、必要以上に消費する食生活へと切り替わりました。
その後さらに食生活の欧米化が進み、現在はなんと、野菜摂取量や、がんの発生率まで、アメリカと逆転してしまっています。
当サイトがあつかっている、アレルギー疾患急増もこの流れの中にあります。
■〇〇村の〇〇さんの〇〇油、の前に
さて、「植物油はナチュラルだから体にいい」スイーツのレシピ本も、この流れの中にあるわけですが、
このような本の多くに共通して言えることがあります。
それは、植物油脂がもつ二つの問題のうち、トランス脂肪酸や、精製された植物油脂については、避けるように指示されることです。
一方の、リノール酸の害については、なぜ言及されないのか。
情報がないのか?
いいえ、あります。いまや、主体的に調べようとすれば、リノール酸が体に良くないという情報は世の中にあふれています。
なぜ、インテリジェンスなはずのナチュラル派が、そこをスルーするのか?
それは、完全に私見ですが、
まず、ナチュラル派として発信しているお母さんたちが、リノール酸神話のさなかに生まれ育った世代だから。
私もそうですが、この世代は、油を日常的に摂ること自体に、抵抗を感じにくいのです。
もう一つは、誤解を恐れずに言えば、イメージに侵されているからです。
この記事で解説してきた「植物油はナチュラルである」という、根拠のないフワッとしたイメージにです。
だって、トランス脂肪酸は、「大きな工場」で「化学的薬品」や「超高熱」によって「機械で」処理された結果、生み出されたもの。
誰の目にも、「アーティフィシャル」「アンナチュラル」なにおいがプンプンする有害物質です。
だからナチュラル派の格好の非難の矛先となるのです。
そして、それさえ取り除けば、
いや、そもそもそういう人工的な処理を経なければ、
〇〇村の〇〇さんが栽培して伝統的な手絞りにした〇〇油であれば、これ以上ナチュラルなものがあろうか?
(こんなところで作られているんだから・・・的な。写真は借り物でイメージです)
そんなイメージで、ナチュラル派は植物油を「ナチュラル」と言い、毎日の使用を勧めるのでしょう。
けれど、残念ながら私たちの身体はイメージを食べているのではありません。
もちろん、トランス脂肪酸を避けることは健康にいいでしょう。
しかしアレルギー疾患や、免疫系の疾患の予防という観点から言えば、大切なのは、植物油の製法ではなく摂取量です。
精製されたサラダ油も、〇〇村の〇〇さんの〇〇油も、リノール酸の量に大した変りはないのです。
毎日使ってはいけないのです。
私たちがまず正さなければならないのは、油の摂り過ぎという、日本の歴史から見たときの大きな不自然、
そして、その不自然を不自然と思うことができない、視野の狭さのほうなのです。
●次回ナチュラルなものは身体にやさしい、の落とし穴